現在日本では不妊に悩むカップルが年を追うごとに増加しています。
2000年ごろは、
カップルの10組に1組が不妊に悩んでいるといわれていました。

不妊に悩むカップル
ところが現在では、
何とカップルの7~8組に1組が不妊に悩んでいるといわれています。
不妊に悩むカップルが激増している背景としては、
女性の社会進出が普通になったことによって、
結婚年齢、
そして出産年齢が上昇してきたことが一番大きな要因です。

さらにこのサイトのテーマでもある、
〃卵子のエイジング〃

ということの教育不足も、
不妊の増加を加速させる原因になっています。

ところで、
不妊になるのは、
妊娠を阻害する原因があるということです。

女性は排卵し、
その卵が精子と出会って受精卵となります。

この受精卵が、
子宮内膜に着床し、
それが胎児として育ち、
やがて出産となるわけです。
ですから不妊というのは、
この卵から胎児に至るプロセスの

どこかに異常が生じた状態ということができます。

精子と卵子
そしてこの不妊の原因は、
大きく3つに分けることができます。
1つは、
精子と卵子が出会えないという状況です。
精子と卵子が出会えないことには、
一受精卵にならないわけですから、
決して妊娠があり得ないことは容易に理解できるでしょう。
そして不妊治療とは、
一言でいってしまえば、
〃精子と卵子の出会いをサポートする医療〃

ということができます。
別の言い方をすれば、
不妊治療とは、精子と卵子の距離を縮める行為〃

といえるわけです。
2番目の原因としては、
一受精卵となった卵、
すなわち肱が子宮の内膜に着床できないという、
着床障害が考えられています。
しかし、
着床のメカニズムそのものがまだ十分に解明されていません。
ですからこの着床障害に関しては、
決め手となる治療がないというのが現状です。
そして3番目の問題というのが、
卵子のエイジングです。
女性の結婚年齢が上がれば上がるほど、
女性の卵子も年をとっていくということです。
そしてこのことが、
不妊治療の現場でも、
妊娠を難しくしている一番の要因となっています。
ですから、
エイジングの問題をくり返し取り上げているわけです。

卵子 老化
しかし多くの女性が、
「年をとると一緒に卵も年をとっていくということを、
今まで一度も習ったことも、
聞いたこともない」

と異口同音に発するというのが現実です。
不妊治療では、
卵子のエイジングに対して、
体外一受精という方法で、
いわばショートカットの妊娠を目指すという方法がとられています。
しかし体外一受精は1回あたりの医療費が、
40~60万円、
医療機関によっては100万円前後というところもあります。
そして体外受精においても、
妊娠率は全国平均22~23%であり、
さらにそれから流産を差し引いた生産率、
すなわち子どもを抱いて帰れる確率は、
15%強です。
要するに、
こんな高額な医療にエントリーしたとしても、
最終的に子どもを抱いて帰れるカップルは、
7組に1組しかいないというのが現実なのです。
エイジングは、
妊娠を困難にする最も大きな問題といえます。
もっとも、
「不妊ルーム」では、
このエイジングに対しては、
漢方薬やDHEAサプリメントなどを用いて

かなり効果を上げてきました。
エイジングは、
治療することは難しいのですが、
教育によって予防するということが容易にできることも事実です。

そもそも不妊とは?

妊娠に至らない状態を

〃不妊〃

というわけですが、
それではいつから

〃不妊〃

と考えたらよいのでしょうか?

 

その点に関しては、
日本産科婦人科学会の定義のようなものが存在しています。

それによると、
「通常の夫婦生活を行い、
2年間妊娠に至らなければ不妊症とする」というものです。

しかし、
私はこの定義は実情にまったく即していないと思います。

なぜなら、
何より結婚年齢が年を追うごとに高齢化していますし、
40歳近くになって結婚した女性が、
2年間子どもができないということで、
不妊治療にエントリーした場合、
結局子どもは授からなかったということになりやすいのです。

40代カップル 不妊
また、
通常の夫婦生活という言い方もきわめてあいまいであり、
毎日のように夫婦生活を持つカップルも、
月に1,2回しか夫婦生活を持たないカップルも、
どちらも自分たちは通常と認識しているのです。

ですから前者においては、
何がしかの妊娠を阻害する因子が

存在している可能性が高いと思われますが、
後者にあっては単に夫婦生活が少ないことが、
妊娠に至らない原因になっているのかもしれません。

それではどのような状態を

〃不妊〃

と認識したらよいのでしょうか?

 

 

私が思うには、
「子どもができづらいな」と思った時が、
スタートラインです。

今日では、
不妊治療というものがあたかも流行のようになっており、
軽い気持ちで婦人科のドアをノックする女性も多いのです。

しかし、
こうした現状を心配しています。
とりわけ家の近所、
職場の近所という理由で婦人科のドアをノックし、
不妊治療らしきものにエントリーして、
かえって行き場を失ったカップルを数多く見てきました。

 

婦人科の医師のすべてが、
不妊治療に精通しているという状況ではまったくありません。
また医療設備の点からいっても、
不妊診療と呼ぶに値しない医療機関も数多く存在しているのです。
「子どもができづらいな」

と思ったカップルがまず最初に取るべき行動は、
基礎体温表をつけることだと断言します。

基礎体温表
2カ月間つけてみるだけで、
先ほども述べたように1枚の紙に

女性の卵巣の状況が映し出されるはずです。
この基礎体温が高温期も低温期もハッキリしないようであれば、
不妊治療にエントリーしてもよいと思います。
「医者選びも寿命のうち」といいますが、
不妊治療の医療機関選びも、
まさに妊娠のうちだと思います。

通院者のステップアップに際して、
何よりも紹介先の医療機関を厳選する

ということに力を入れています。

 

そして、
この基礎体温にさしたる問題がないと考えるのであれば、
次に取るべき行動は、
排卵日検査薬を併用してみることです。
女性の年齢にもよると思いますが、
排卵日検査薬を使用してタイミングを待つということを、
3カ月~半年行ってみて、
それでも妊娠に至らなければ、
不妊治療に進んでもよいと思うのです。
こうした状況になれば、
自分たちはやるべきことはやったという自覚も持てると思いますので、
不妊治療にも納得してエントリーができるでしょう。
ここで注意しておかなければいけないのは、
不妊というのは前にも述べたように生活習慣病的な色彩が強いということです。
ですから医療という視点だけで見ていくと、
本質を見誤ってしまうことにもなりかねません。
これまで述べてきたように、
一昔前に比べると今の時代、
妊娠するということが

とても難しい社会状況になってきているのです。
ですから、
自分たちの身の回りを振り返ってみることも大切なのです。
夫婦生活が少ないのであれば、
より回数を増やせるような工夫をしてみることは、
とても大切だと思います。
戦後しばらくは、
日本には糖尿病というものがとても少なかったのです。
それもそのはずで敗戦後、
明日の食糧を確保するのが大変という時代が長く続きましたから

人々が過食や飽食になるといった状況は、
あり得なかったのです。

 
しかし今日のように、
物があふれ、
高カロリー・高脂肪の食事が当たり前になってくるにつれて、
糖尿病患者は増加というよりは、
激増してきました。

高カロリー 食べ物
今や糖尿病予備軍も含めると、
日本人の2割が

いつ糖尿病を発症してもおかしくない状況にあるといわれています。
この病気もまた、
生活習慣病といわれるように、
食生活の欧米化や生活様式の変化で増加してきたわけです。
不妊もまたまったく同じで、
女性の社会進出が当たり前となった結果、
今日のように増えてきました。

 

増加しているクラミジア感染症

不妊の原因となる病気を取り上げだしたら

キリがないといった側面があります。
ですからここでは、
最も重大で、
頻度の高い3つの病気について説明します。
最初に取り上げるのは、
〃クラミジア感染症〃という病気です。

クラミジア
この病気は、
クラミジア・トラコマチスという病原体が感染することによって起こる、
性行為感染症(STD)の1つです。
クラミジア感染症は、
年を追うごとに患者の数が増加しており、
そのことが不妊の増加にもつながっています。
クラミジア感染症が増加している理由は、
単純明快です。
今日では、
男女ともに、
複数のパートナーと性的関係を持つことが、
当たり前になってきているからです。
パートナーの数が増えれば増えるほど、
クラミジア感染の確率が高くなることはいうまでもありません。
クラミジア感染症がなぜ不妊をもたらすかといえば、
この病原体が卵管の中で炎症きよ草つさくを起こし、
それが卵管狭窄、
卵管閉塞などにつながりやすいからです。
もしも両方の卵管が閉塞してしまえば、
通常のセックスはもとより、
人工授精を行っても妊娠に至らないことは当然です。
こうした場合には、
体外一受精の適応となります。
このクラミジア感染症感染症に関して何よりも重要なことは、
感染してもほとんどの場合、
自覚症状がまったく見られないということです。
それでいて、
女性の体内で静かに病状が進行し、
卵管の通過障害の原因になるということが怖いのです。
まさにサイレント・ディジーズ(沈黙の病気)です。

不妊の原因
私は、
この病気に関しては、
治療もさることながら、
何よりも予防が大切だと思います。
そして、
クラミジア感染症を予防できるのは、
教育の力です。
結婚を前提としていないセックスには、
必ずパートナーにコンドームを着用してもらうなどの

基本的な知識を持っていれば、
クラミジアの大部分は予防することができます。
クラミジァ感染症の検査で、
陽性と出た場合の治療法は、
抗生剤の服用です。
大切なことは、
パートナーも、
同時に服用することです。
それによって、
ほとんどの場合、
感染症そのものは治療することができます。
一人だけ治療しても、
互いの感染をくり返すピンポン感染ということが起こりますので、
パートナーとのあいだでのクラミジア感染症の根絶は難しくなります。
そして、
卵管が通っているのか、
いないのかという検査がとても大切になってきます。
実は、
この判別が行えるのは、
子宮卵管造影検査のみなのです。
問題なのは、
世の中にたくさんある婦人科やレディースクリニックで

この子宮躯管造影検査の設備がないところがとても多いことです。
この検査の代用として、
卵管通水(通気)検査などが行われていますが、
これでは片方の卵管がとりあえず通っているという情報以外、
得ることができません。
したがって、
相談に来られる方には

「もし不妊ということで検査を一受けるのであれば、
あなたが通院しようと思っている医療機関に、
子宮卵管造影検査の設備があるかどうか、
必ず事前に確認をとっておいてください」

とくり返し言っています。
さらにいえば、
この子宮卵管造影には、
検査のあとの半年間は妊娠しやすくなるといった

治療的な側面もあるのです。

 

子宮内膜症と不妊

子宮内膜症は、
不妊とは切っても切れない関係にある病気です。
というのも不妊に悩む女性の3分の1に子宮内膜症が認められ、
子宮内膜症の女性の半数が、
不妊に悩んでいるからです。

不妊症に悩む女性
この事実からも、
子宮内膜症という病気の重大さがわかると思います。
そして、
この内膜症という病気は、
現代病という性格を強く持っています。
そのことは、
子宮内膜症が発症するメカニズムを知ることで、
容易に理解できます。
子宮内膜症とは、
本来子宮の内側に発達するはずの子宮内膜が、
異所性、
すなわち、
卵管、
腹膜、
子宮筋層内など、
本来存在すべき場所ではないところに増殖する病気です。
そしてこうしたところに発生した子宮内膜も、
生理周期に合わせて増殖・剥離をくり返します。
子宮の内腔に発達した子宮内膜は、
妊娠に至らなければ生理という形で、
体の外に排出されます。
しかし、
異所性に発達した子宮内膜は、
いわば出口がありませんから、
その場所で増殖・剥離を続けることになってしまうわけです。
これが子宮内膜症という病気の本態です。
ですから、
女性が生理周期をくり返す期間が長ければ長いほど、
子宮内膜症が発生する確率が高くなるわけです。

お医者さん
50年前を考えてみてください。
女性が若くして結婚し、
子どもを続けて産んだ時代にあっては、
妊娠している期間、
すなわち生理がないという期間が非常に長かったわけです。
ですから、
子宮内膜症という病気が発生する余地がとても少なかったといえます。
それに比べると現在では、
結婚年齢の上昇に加え、
少子化が進んでいますから、
一人の女性が経験する生理周期の回数は、
以前とは比較にならないくらい多いわけです。
こうした現実が、
子宮内膜症の増加をもたらしているのです。
そして、
この異所性に発達した子宮内膜が、
いろいろと悪さをするわけです。
卵管内に内膜が増殖すれば、
卵管閉塞を起こします。
また、
腹膜に発生した内膜は、
周辺の臓器との癒着を高頻度に起こしますので、
やはり通過障害の原因となります。
また、
排卵した卵子をキャッチするのは、
卵管の末端にある卵管采という部分ですが、
腹膜癒着などが重症となれば、
このキャッチャーミットがうまく機能しなくなります。
さらに癒着は、
性交痛や月経困難症などといった症状も引き起こしますので、
こうしたことも不妊の原因になります。
さらに異所性の子宮内膜からは、
妊娠を阻害するような化学伝達物質が放出されているという報告もあります。
ですから、
子宮内膜症は女性にとって、
妊娠を望む上でやっかいな病気なのです。

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そして大切なことは、
子宮内膜症と診断された場合、
どのように治療を行っていくかということです。
生理がないという状態であれば、
異所性の子宮内膜は萎縮していきますので軽快します。
それでかっては、
男性ホルモンを投与する、
あるいは一時的に女性を薬によって閉経したような状態にして、
生理を止めてしまうなどということが行われていました。
しかし、
こうした治療では、
その期間中、
妊娠を期待できなくなってしまいます。
子宮内膜症の最善の治療は、
妊娠です。
妊娠すれば生理が止まりますから、
内膜症が軽快していくわけです。
しかし、
その妊娠を難しくしているのが内膜症であるというジレンマがあるわけです。
したがって、
最近の治療の傾向として、
症状がそんなに強くない女性に対しては、
積極的に妊娠を目指すという方向になっています。
妊娠=内膜症の治療十本来の希望でもあるわけですから、
まさに一石二鳥というわけです。
また、
重症の内膜症に対しては、
最近では腹腔鏡を用いて、
お腹を切らずに異所性に発達した子宮内膜を、
いわば大掃除するといった治療も、
積極的に行われるようになりました。
子宮内膜症と診断されたら、
何よりも現在の病状の把握と、
今後の治療的アプローチについて、
医師とよく話し合うということが大切です。

にんかつ 相談

子宮筋腫と発生部位

子宮筋腫という病気は、
今も昔も女性に一般的な病気ですが、
やはり増加傾向にあることは間違いありません。
子宮筋腫とは、
子宮の中に発生した良性の腫傷です。
良性ですから、
転移をしたりといった悪さはしないのですが、
何よりもその筋腫の存在そのものが、
妊娠の妨害になることが問題です。
医師なら誰しも経験的にわかっていることですが、
子宮筋腫は女性の年齢が上がってくるにつれて、
その頻度が高くなっ子宮筋腫と妊娠との関連でいえば、
問題となるのは筋腫の「大きさ」と「発生部位」です。
大きさについていえば、
どの場所に発生したにせよ、
筋腫が握りこぶし大を超えるようになれば、
やはり妊娠、
ひいては胎児の発育の阻害因子となります。
そして大きさ以上に大切なのは、
どの部位に発生するかということです。
子宮は、
平滑筋という筋肉でできている臓器ですが、
子宮筋腫の発生部位は大きく3つにわけることができます。
子宮の筋肉の中に発生したものは、
〃筋層内筋腫〃、
子宮の外側、
すなわちお腹側に発生したものは、
〃しよう膜下筋腫〃、
そして内側に発生したものを

〃粘膜下筋腫〃といいます。
妊娠を望む上で問題になるのは、
この〃粘膜下筋腫〃です。
子宮の内側の粘膜E受精卵が着床して、
妊娠となるわけですから、
そこに子宮筋腫が存在すれば、
妊娠の妨げとなるわけです。
子宮筋腫の治療に関しては、
かつてはお腹を開く開腹術が一般的でした。
しかし医療全体の傾向として、
なるべく患者さんの負担にならないような治療をするという流れになってきていますから、
最近では腹腔鏡に加え、
経腔的に子宮鏡下で筋腫を取り除くといった治療も、
積極的に行われるようになりました。

にんかつ 女医
こうした方法であれば、
入院期間も短く、
また手術後早い時期から妊娠を期待することもできます。
子宮筋腫に関して大切なことは、
その存在を自分が知っておくということだと思います。
極めて小さな子宮筋腫も含めれば、
生殖年齢にある女性のほとんどが子宮筋腫を持っているという婦人科医もいます。
しかし、
それが大きく発育してくることで、
妊娠の妨げになってくるわけです。
顔のシミなどは鏡に映りますが、
筋腫は映りません。
しかし、
女性が1年に1回婦人科検診を受けるという習慣を持っていれば、
自分の子宮筋腫を自覚することができます。
子宮筋腫のある人は、
検診などの際に医師に一言、
「筋腫は大きくなっていませんか?」

「妊娠の妨げになりませんか?」

というように声をかければきちんと調べてくれるはずです。
また、
子宮筋腫は貧血をきっかけに見つかるということもしばしばです。
ですから、
貧血を指摘されている女性は、
子宮筋腫を疑ってみるという姿勢が、
本当に大切です。
妊娠を考える以前から、
子宮筋腫を含め、
女性として自分の体の状態を知っておくという自覚は、
今を生きる女性にとって、
とても大切なことです。

不妊 にんかつ 女医